技術情報

静電気現象と障災害

静電気の測定と対策について

一般に、静電気は物体表面の接触と分離、変形、イオンの付着、放射線、変態、化学変化等によって発生します。 静電気は、クーロン力に代表される力学的作用(吸引力、反発力)、静電誘導および放電等の静電気現象を引き起こし、古くから障災害の原因になっています。特に最近は、半導体関連の進歩によりハードディスクのGMRヘッドなどのように、半導体素子が静電気に対して非常に弱くなってきており、対策も急務となってきています。(下図1参照)

図1 静電気による障災害および測定と対策

静電気の特徴

電荷の移動速度:絶縁物の場合極めて小さい
アースが効かない。
電荷の移動速度:導体の場合極めて大きい
大きなエネルギーを持った火花になる。
電流、電荷量:絶縁物では比較的に小さい。電位:非常に高い
測定しにくい。誘導が発生する。
電流、電荷量:誘導した後は電荷量も電位も大きい
大きなエネルギーの火花放電が起きる。
静電気の発生:比較的に簡単
どこでも発生するため工業上問題が発生しやすい。
静電気による電界:力学的な作用がある
物がくっつく、はがれない、浮き上がる。
湿度の影響:湿度が高いと発生しにくいため問題とならないことが多い
冬場になると大問題となることがある。

静電気の測定

静電気による障災害を防止するためには、まず静電気の帯電状態を把握することが必要です。 把握するためには、静電気の測定がとても重要となります。静電気の測定は下記のような理由から、普通の電気を測定とは異なり、簡単ではありません。

  • 静電気は電圧が高く、電流が微小なため、通常の測定器では測れないこと
  • 測定系がもともとの対象物の状態を乱し、変化させてしまうこと
  • 電荷が空間的に分布している場合の多いこと

このようなことから、さまざまな静電気特有の測定方法が応用されています。測定方法としては、帯電状態を知るための帯電電荷量の測定、および電荷によって生じる表面電位の測定があり、さらに電荷の漏洩特性を知るための電荷減衰測定とその目安となる抵抗測定があります。

静電気障災害の対策

静電気の帯電は、静電気の発生そのものではなく、静電気の発生とその漏洩(緩和)との差で表される状態のことです。一般に、静電気の発生を抑制するのは難しい場合が多いため、発生した静電気を速やかに漏洩または中和させる手段が帯電防止のポイントとなり、さまざまな静電気対策機器・用品が開発されています。 主な静電気の帯電防止対策には、次の3点があります。

  • 接地(導体の場合のみ)
  • 導電率の向上(加湿、帯電防止剤)
  • 電荷中和(すべてに有効)

接地は金属(導体)の静電気対策として最も基本的な手段です。人体も導体の部類に属するため、接地が有効です。特に人体は着衣との摩擦により急激に静電気を発生させたり、歩行動作による静電容量の変化で急速に電位が上昇するため、その帯電の防止には、接地具のリストストラップや導電靴の着用が必要となります。接地は導体にとって基本的な対策ですが、絶縁物(誘電体)の帯電防止にとっては無効のため、誘電率の向上のための加湿や帯電防止剤の使用、イオナイザなどの除電装置の使用が一般的になります。 絶縁物の場合、具体的な対策として一つは導電率の向上であり、特に表面抵抗の低減が有効です。その簡易的な手段は空気中の湿度の増加です。相対湿度を50~60%以上に保つと効果がでます。しかし、高湿度環境では、結露、錆、カビの発生も予想されるとともに、高湿度が製品に与える影響や作業者の不快感による作業効率の低下や純水を使用しなかった場合の不純物の発生などが問題となります。 その他、帯電防止剤を絶縁物の内部に混入または表面に塗布して導電化する方法が実用化されています。しかし、これらの方法は常に適用できるわけではなく、多くの場合には電荷中和に頼らざるを得ません。空気イオンによる電荷中和(イオナイザの利用)は最も効果的な対策であり、絶縁物の静電気除去に幅広く適用されています。 これまではイオナイザでも届かない奥まったところなどでも、弊社製品「ZAPPII」はイオンを送りこみ除電する事が可能となっています。 イオナイザは、全ての産業界の静電気対策に使用され、静電気対策に絶大な効果をあげています。 イオナイザ以外の対処方法もありますが、イオナイザとの併用が効果的であり、静電気の専門家(ESDコーディネータ)のアドバイスによって設置・運用することで、最適な静電気対策が可能です。 他の静電気対策方法としてまとめると、次のようになります。

  • 自己放電式除電装置(一般的に除電ブラシと呼ばれます)
  • 工業用加湿器の設置
  • 人体のアース(リストストラップなど)
  • 床の導電性への変更や導電靴の導入

また、静電気対策管理のための測定器類としては次のようなものが一般的です。 ※()内は弊社製品の測定器

  • 静電気測定器(DZ4、DSF601/W)
  • 表面抵抗測定器(MEG101)
  • 靴抵抗測定器(シューテスタⅡ)
  • 減衰度測定器(樹脂用:オネストメータ イオナイザ評価用:CPM301、DP)
参考文献
  • 静電気学会編:新版・静電気ハンドブック(オ-ム社 1998)
  • 労働省産業安全研究所編:静電気安全指針,RIIS-TR-87-1(1988.3)
  • 労働省産業安全研究所編:静電気用品構造基準,RIIS-TR-91-1(1991.7)
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